終身雇用制度の崩壊、リモートワークの推奨、副業の解禁など、働き方に関する制度も前提も、考え方も変わり続けている現代社会。
特にライフイベントが多い女性は、一度は自分の仕事や職場、働き方の見直しを考えたことがあるのではないしょうか。中には、実際に転職に踏み切る方もいるでしょう。
ですが、転職は時間も費用も、心身的な負担もかかるもの。また、多くの求人情報を目にしていると魅力的な条件にも目移りしがち。効率よく、軸のブレない転職をするためには、転職活動をする前に「自分が転職によって手に入れたいもの」を予めしっかり決めておくことが必要です。
転職が身近な選択肢になっている今だからこそ、焦らず考えてみましょう!
今、何に困っているのかを見極める
まず、現状の自分が何に困っているのかを考えてみましょう。
例えば「給料が少ない」のか、「労働時間が長い」のか、それとも、「キャリアアップをしたい」なのか。
困っていることをクリアにすると、自分が次の職場に求める条件が必然的に絞り込めてくるでしょう。
収入をアップしたい
最低どのくらいの金額が欲しいのか計算してみましょう。また「求める金額を得るために、自分がどの程度まで努力できるのか」も合わせて考えることが必要です。
- とにかくガツガツ稼いで、手に入れられるだけ収入をアップしたい。
- あまり残業は好きじゃないけど、毎日2時間くらいまでなら残業できる。
- 未経験だが勉強を頑張って、今より基本給の高い仕事につきたい。
いずれも収入アップに重点を置いていますが、努力のポイントが異なる目標です。
ガツガツ稼ぎたい人は、契約件数に応じて収入がアップする営業職を探すのも良いでしょう。ただし、契約件数に応じて収入が変動するため、営業成績を維持するために多少はワークライフバランスを妥協する必要があるかもしれません。
残業代で月収の上乗せを狙うというパターンもあるでしょう。ただし、業務量の変動が収入に結びつくリスクもあります。コロナウイルス禍で残業がなくなり、収入が減ったという経験をした方も多いかと思います。
収入アップのためには、基本給をアップするのが最も確実な方法です。アップ額によってはもちろん同業種・職種内で転職することもできますが、大幅アップを狙う場合は仕事そのものの専門性を上げたり、業界自体を変えることも有効です。
ワークライフバランスを整えたい
現在業務過多であったり、長時間労働に苦しんでいる場合にまず挙げられるのはこの条件でしょう。
第一に、現在の職場が心身を壊しかねない労働環境であれば即転職を検討すべきです。場合によっては、転職の前にリフレッシュ期間をとるのもオススメです。とにかく、自分の心と身体を守れるように動いてください。
満を持して転職活動ができるようになったら、まずは収入アップと同じく、自分の中での優先度合いを考えてみましょう。言い換えれば「どの程度まで妥協できるのか」を考える作業です。
例えば、広告会社でクリエイティブ職についていた人が、保険会社の事務職に転職したとします。ワークライフバランスの改善は見込まれますが、業種も職種も異なる仕事に対応する必要があります。クリエイティブ職の業務自体は楽しめていた場合、事務職のルーティンワークはやや退屈に感じられるかもしれません。
極端な例ですが、「業務適性や仕事のやりがいよりも、ワークライフバランスを優先できるのか?」といった部分が判断基準になるパターンです。
キャリアアップをしたい
この場合、まずは自分が求めるキャリアを思い描いてみてください。そして、求めるキャリアアップが現在の会社で実現できないと考えるのであれば、それはなぜかを掘り下げましょう。
- 産休や育休制度はあるが、利用者が少なく女性が昇進できない
- 年功序列の社風で若手が活躍できない
- ニッチ業界から、もっと広い業界で挑戦したい
- 異職種に挑戦したいが社内異動が難しい
- モノを売る営業から、コンサルティング営業ができるようになりたい
などなど、求めるキャリアアップのビジョンやステップは人によって様々です。ひとつの職種を極めるプロフェッショナルになるのか、様々な知識を持つゼネラリストを目指すのか、という視点もあるでしょう。
自分がどのようなキャリアを描きたいのかを明確にしておくことで、ブレのない転職活動を行えます。
絶対に譲れない条件を1つだけ決める
とはいえ、現在抱えている問題が一つだけ独立していることは少ないでしょう。多くの場合、「業務量が多いわりに収入は少ない」「昇進してもっと働きたいが、ワークライフバランスを考えると不安」など、複数の問題が絡み合っていることがほとんどです。
「業務量が適切で、ワークライフバランスも保てて、収入は多く、やりがいもある」といった完璧な職場に巡り合うのが理想ですが、なかなか難しいのが現実です。また、適切な業務量が人によって異なるように、誰かにとって働きやすい職場が、自分にとってそうであるとも限りません。
そこで重要なのは、譲れない条件を1つだけ決めることです。収入を上げるのか、ワークライフバランスを整えるのか、キャリアアップを目指すのか。もちろん、それ以外でも構いません。
決めるときの目安としては、自分がどのような生活を送りたいのかを考えてみると良いでしょう。
例えば「アイドルが好きで、いっぱいライブに行きたい!」という人の場合、少なくとも2つの選択肢があります。
- 遠征費用を捻出するために、仕事は多くてもとにかく給与がたくさんもらえる会社に勤めよう。毎日いっぱい働いて、土日は全部通うぞ!
- 休日はもちろん、平日でも突発でもライブは全部参戦したいから、いつでも休めて定時上がりの職場にしよう。その代わり、費用は日々の節約で貯める!
前者は譲れない条件が「給与額」、後者は「ワークライフバランス・福利厚生」です。また、いずれも「キャリアアップ」や「仕事のやりがい」は条件に入っていません。
自分が叶えたいライフスタイルを想像して、まずは譲れない条件を1つだけ決めましょう。それ以外は優先順位をつけていくことで、比較検討をしやすくなります。
求める条件が「働きやすさ」の場合、より具体的に
転職を目指す人の条件によく挙がるのが「働きやすい職場」というものです。
この条件も、これまで説明してきた内容と同様に、より掘り下げて明確化することが重要です。ざっと挙げられるだけでも、下記のような視点があります。
- 残業の有無・量
- ノルマの有無
- 年間休日数
- 1日の労働時間
- 始業・終業時間
- 勤務先の立地・アクセス方法
- 転勤の有無・頻度
- ライフイベント等に応じた制度
- 各種手当、福利厚生
- 男女・年齢比率
- トップダウン型・ボトムアップ型
労働条件や社内制度をチェックするだけで解決できるものも、実際に職場を見ないとわからない内容もあるでしょう。
始業・終業時間や1日の労働時間は案外見落としがちな項目の1つです。例えばメーカー系であれば、本社勤務でも工場に合わせたタイムゾーンに設定されている企業が多く、朝8時台の始業も珍しくありません。
一方、繁閑が激しい会社は変形労働時間制を採用していることもあります。これは業務量に応じて年・月・週単位で労働時間を調整できる制度のことです。
極端な例ですが、繁忙期の7月から9月は毎日10時間労働、閑散期の10月から12月は毎日6時間労働……というように、労働時間を調整できるのです。それに伴い、始業・終業時間が月によって変わる会社もあります。
福利厚生や制度に関しては、制度自体はあるものの、実際はさほど活用されていないという企業も残念ながら存在します。逆に、独自の制度をたくさん打ち出し、社員も頻繁に活用している会社もあります。
「制度がある」だけで安心せず、「活用されているかどうか」を基準に考えると良いでしょう。
まとめ
転職は、自分が求めるライフスタイルやキャリアプランを叶えるための大きなチャンス。だからこそ、しっかりと下準備をしておくことが大事です。
「現在の自分」と「なりたい自分」の間にあるギャップを具体的に捉えることで、叶えたい希望や、本当に求めるものが見えてくるはず。それが決まれば、大きく迷うこともなくなります。
動き出す前に 自分の中の軸を決めておくことが、後悔しない転職を実現するコツです。
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